阿弥陀堂だより
主観になりますが、邦画の中では珠玉の名作。もう何度見たか分かりません。映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」はエルネスト・ ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナの葛藤と共に美しい南米を捉えていましたが、「阿弥陀堂だより」もまた人の繊細な洞察と美しい日本の風景を捉えています。キャストの寺尾聰は自然体だし、樋口可南子も綺麗です。おうめ婆さん役の北林谷栄も無骨で優しげです。

とても静かな作品です。ところが古き日本の持つ生死感や、その狭間に混在する数多くの物事を見事に表現しているので引き込まれます。例えば「生」や「死」といったテーマは取り扱いや順序を間違えると稚拙で曖昧になってしまうと思うのですが、きちんと繋がっていると本来の意味を提示してくれます。無駄な装飾を省き、歴史や重みを退屈と捉えず現代と照らし合わせた作品が「阿弥陀堂だより」なのでしょう。丁寧で正確、息遣いや言葉を優しく大切に扱っているのでとても響きます。ラストの「阿弥陀堂だより」の一文もまた日本の山岳信仰からなる里と山を表現していて物語に淀みがありません。四季の風景や言葉も含め、物凄く計算された作品なのだと思います。
登場する日本家屋も見ていて心地よいです。年齢にもよると思いますが、質素を機能美だと感じるのは等量分割の正確な比率や対照的なアンシンメトリーの風景が、襖や畳などを通して体に馴染んでいるからなのでしょう。
































