行かずに死ねるか! 世界9万5000km自転車ひとり旅
いつかは読もうと思っていた作品ですが「人の旅より自分の旅が先だろう」とスルーしていました。でも、リハビリがてら始めたウォーキングが2,250kmを超えたので、距離的には1/38と全く及びませんが、よい機会だと思い読んでみました。

総てがある、とまでは言いませんが、多くの様が詰まっています。最高のノンフィクションであり、珠玉のロード・ノベルです。最近読んだ本では小説「1Q84」がベストでした。「ノルウェイの森」以来村上春樹は好みじゃないのですが、三巻とも夢中になって読みました。でも「行かずに死ねるか!」はこれまで読んだ本の中でもベストに入ります。初版は2003年だし、安易に両作品を比較出来ませんが「終わらないで」と思いながらページを捲ったのはとても久し振りで、個人的には「1Q84」を超えました。言葉はシンプル、でも稚拙ではありません。個人的にはK・ローレンツの「攻撃」や三島由紀夫の「潮騒」を読んだ時と同じくらいに楽しみました。最高の読み物です。
描写が適度なので、決して現地に行った気にはなりません。だから旅に出掛けたくなります。以前、西表島で出合った自転車乗りは北海道から走って来たと言ってました。あまりに逞しい脹ら脛を見た際、バイク乗りの私は咄嗟に「敵わん」と思いました。でも、旅には様々な形があるので、比べる必要はありません。互いの無事を祈り、自転車乗りもまた決してエンジン付きを馬鹿にすることなく、握手を交わして別れました。「僕もバイクは大好きです。でも、いつの日か試しに自転車で旅をしてみて下さい、きっとハマリますよ」と。その清々しさがこの作品にもあります。相手のスタイルに敬意を払う姿です。
日常のウォーキングにもドラマはあります。例えば夏の炎天下、汗だくで歩いていると、弾けるような笑顔を浮かべながら小さな女の子が近付いてきました。何をするかと思えば、握りしめていた団扇で私を扇いでくれました。豪雨の中歩いていると、オバチャンが「傘貸してあげるから」と声を掛けてくれたこともあります。悪い人もいますが、心優しい人もいます。
歩くにはとてもよい季節です。「世界9万5000km」には及びませんが、目を懲らせば日常もルートに成り得ます。その延長線上に異文化はあるし、道も続いています。歳を重ねる毎に長旅は難しくなりますが、長い目で、時間や現実に押しつぶさることなく私も地図を埋めたいと思います。ちなみに写真はウォーキングコースの一部、晴れた日の夕暮れはなかなかの風情です。








